思春期外来での主な対象疾患
適応障害
適応障害とは、新たな社会環境にうまく慣れることができず、抑うつ、不安、不眠、食欲不振、不登校など、さまざまな症状や問題が現れて、社会生活に支障をきたす心の疾患です。
適応障害は、誰にも起こり得るような環境変化のストレスによって、予想以上に精神的ダメージを受けた状態です。その背景には、周囲のサポート不足や本人の精神的な脆弱性が関与していると考えられています。
まずは、ストレス因子を除去するように環境を整えたり、場合によってはしばらくの間、休学などによって休養をとったりして、心のエネルギーを回復させることが重要です。
不安や不眠、うつ状態などに対しては薬物を使うこともあります。ただし、適応障害の薬物療法は「症状に対して薬を使う」対症療法になり、根本的な治療ではありません。適応障害の治療は、薬物療法だけではうまくいかないことが少なくありません。そのため、環境調整やカウンセリングが重要になってきます。
思春期うつ
成人のうつ病では、長期にわたる抑うつ気分や意欲低下などの症状を呈します。しかし、思春期うつでは、こうした気分障害がみられるケースはむしろ少なく、身体・行動面の症状として現れる傾向があります。
具体的には、原因不明の腹痛、頭痛、登校拒否やひきこもりのほか、衝動的に非行に走ったり、アルコールや薬物に手を出したりすることもあります。
治療としては一般に、抗うつ薬などによる薬物療法が行われますが、考え方の偏りを是正する認知行動療法が併用されることもあります。精神状態の悪化要因を取り除く環境調整も大切です。
発達障害
幼児期、学童期に注意欠如多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群などの発達障害と診断され現在治療、支援を受けている方、あるいはその可能性を指摘された方も多くいらっしゃると思います。
発達障害と診断された後も、入園、入学、卒業、進学、就労などその後のライフステージの変化に伴い、当事者の症状、治療内容や支援のありかたは少しずつ変化していきます。 当院思春期外来では児童期から引き続き、その特性に応じた本人らしい学びのあり方と青年期成人期の社会参画に向け、丁寧な医療支援とソーシャルサポートを行います。
起立性調節障害
朝起きづらい、頭痛をよく訴える、立ちくらみがするなどの症状があれば、起立性調節障害の可能性があります。起立性調節障害は自律神経の病気であり、思春期に多いのは、体が急激に成長して自律神経のバランスが崩れやすいためと考えられています。心理的なストレスも、悪化の原因になります。不登校や引きこもりにつながるケースも見られますが、けっして本人が怠けているわけでも、仮病を使っているわけでもありません。
お子さんが、朝がひどく苦手なようなら、この疾患かも知れませんので、早めの受診をお勧めします。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、腸には明らかな病変が無いのに、下痢や便秘などを伴う腹痛や腹部不快感が繰り返される疾患です。ストレスとの関係が深いことも知られています。思春期に入ると、ストレスを感じることが多くなります。友達との人間関係、学校の勉強や受験・進路の問題、家族とのかかわりなどについて、深く悩んでいることが少なくありません。
治療法としては、生活指導、食事療法、薬物療法、精神療法などがあり、まずは日常生活を大きな支障無く送れるレベルの改善を目指します。